「ルノワールXセザンヌ」展の意外なおもしろさ
ルノワールもセザンヌもこれまで実にたくさん見た。この40年ほど、日本はもちろん、フランスでもアメリカでもドイツでも。だから三菱一号館美術館で「ルノワールXセザンヌ モダンを拓いた2人の巨匠」が始まったと聞いても、さほど食指は動かなかった。ところがNHKの「日曜美術館」で2人の作品が並べて展示されているのを見て、興味が湧いた。
少なくとも私の中で2人のイメージは全く違っていて、比較する意味はないと思っていた。ルノワールは印象派の光の表現をまるで18世紀のロココのような裸婦像に取り入れた。南仏の太陽に輝く太った裸婦たち。
セザンヌは光の表現によって静物や風景を多くの次元から見せた。光によって物質は輪郭を失って色として独立する。すると絵画には余白が生まれる。だからセザンヌはあくまで印象派が終わったところから「ポスト印象派」をリードする画家だと思っていた。
実はこの展覧会で一番驚いたのは彼らの生まれた年が2つしか違わないことだった。ルノワールは1841~1919、セザンヌは1839~1906で何とセザンヌの方が年上だった。私はセザンヌは最低でも10歳は若いと信じ切っていた。
だから展覧会の最初でそれぞれの似たような光景の風景画が1点ずつ並んでいるのを見てちょっと驚いた。パッと目には気がつかないほど似ている。それは1874年の「第一回印象派展」が開かれた頃の絵で、写真の出現によって目に写るままに自由に自然を描こうという方向性は共通している。2人はすでに1860年代から交流があった。
2人は印象派展に参加しているが、その後いつも参加したわけではない。セザンヌに至っては、その後は第三回のみ。モネが中心の印象派から離れて、ルノワールもセザンヌも独自の道を切り開いている。2人はそれでも交際を続けた。ルノワールは暖かい色調の肖像画ですぐに人気を集めるが、セザンヌが売れ始めるのは1895年の古典から。
今回の展示作品の多くはパリのオランジェリー美術館からで、この美術館の中核となったのは画商でコレクターのポール・ギョームのコレクションという。ギョームは印象派やポスト印象派ではこの2人のみを収集していた。今回の展覧会を見ると、個性の際立った2人の画家を集めたくなるのが、わかる気がしてきた。
そんなこんなで、期待よりもずいぶん楽しんだ。9月4日まで。
| 固定リンク
「文化・芸術」カテゴリの記事
- あらためて河鍋暁斎に驚く(2026.05.06)
- 観山とは(2026.04.22)
- 「テート美術館」展の見せる90年代(2026.04.06)
- 大西茂とは(2026.03.27)
- アルフレッド・ジャーのコンセプト力(2026.03.15)


コメント