アボリジナル・アートとは
最近、一番お気に入りの美術館は、アーティゾン美術館だ。日本橋と京橋の中間という都会のど真ん中にあり、企画展が充実していて常設もしっかり楽しめる。ムードとしてはニューヨークの近代美術館のような感じで(あんなに広くないが)、そこにいることが快適な空間だ。
最近見たのは9月21日まで開催の「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」展。アボリジニという言葉はオーストラリアの先住民族として聞くが、アボリジナルとは何なのか。ネットに担当学芸員のインタビューを見つけたが、以下の通り。
「オーストラリアでは、アボリジニという言葉は長らく差別的に使われてきた文脈があり、現在ではほとんど使われていません。かわりに形容詞の「アボリジナル」を用いて「アボリジナル・ピープル」や「アボリジナル・コミュニティ」「アボリジナル・アーティスト」など、より多様性を含んだ表現が主流となっています」
つまり、より現地の言い方に近づけたということ。展覧会は女性アボリジナル作家7名と1組の作品を見せている。見てみると、いわゆる伝統工芸的な模様や図像などを中心にしたものから、絵画による自己表現や立体による政治的なものまでさまざま。しかし根本にはどこか非西洋的な呪術のような力がある。
最初のノンギルンガ・マラウィリ(1938頃〜2023)は布や木に繰り返しの模様を描く。暗い空間に浮かび上がると、かなりな迫力。ジュディ・ワトソン(1959〜)は、アボリジナルの祖先を持つ。公的文書や歴史資料に手を加えた作品でアボリジナル社会への差別を視覚化している。こちらはかなり現代美術的になる。
イワニ・スケース(1973〜)の吹きガラスを用いたインスタレーションはさらに「現代美術」。ガラスにウラン酸化物が少量入れてあり、それが青い光に反応する。南オーストラリアは大規模なウランの採掘があり、それが健康障害を起こしていると解説に書かれていた。あるいは英国の核実験が行われた地域の爆弾を模したガラス細工もあった。
つまりアボリジナル地域の人々は英国の入植者から差別を受けたうえに、鉱物の採掘や核実験があって、さまざまなレベルの被害を受けてきた。最近の若手作家には、それを抽象化した造形で見せる知性と執念が感じられる。展示はこれでおしまいと思ったら、下の5階もアボリジナルだった。今日はここまで。
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