「ペドロ・コスタ」展など
東京都写真美術館で12月7日まで開催の「ペドロ・コスタ インナーヴィジョンズ」展を見た。「総合開館30周年記念」というが、もともとペドロ・コスタ監督の映画を見ていないと全くわからないのではないか。
私はたぶんペドロ・コスタの映画を日本で最初に上映している。2000年6月から全国5会場を巡回した「ポルトガル映画祭2000 パオロ・ブランコと90年代ポルトガル映画」で彼の『骨』(1997)を上映した。VHSで見て、これは特異の才能だと思ったから。翌年の秋に彼は『ヴァンダの部屋』で山形国際ドキュメンタリー映画祭で最優秀賞を取って有名になったが。
2003年には小津安二郎生誕百年国際シンポジウムにも出てもらった。「小津はパンクだ」という表現が抜群に受けた。彼の映画はおおむねリスボンのスラム街に住む貧しい人々を写すものだが、およそ小津と関係がなさそうだった。
今回の展覧会では、最近の彼の映画から強い人物のアップを暗闇に映し出す。その顔の迫力はなかなかで、映画作品を思い出しながら見ると、展覧会としてはよくできている。少なくともゴダールの展覧会よりは、明らかに展示効果は上だ。それにしても、映画を見ていないと全く意味不明だろう。そもそも映画自体がわかりやすくはないが。
そういえば、最初の狭い通路にアメリカの写真家、ジェイコブ・リースが19世紀末のニューヨークの貧困地区を撮った写真が10枚ほど並んでいた。この美術館の所蔵作品だが、確かにそのままリスボンの貧民窟につながってゆく。
むしろ9月末まで開催の「ルイジ・ギッリ 終わらない風景」展と「トランスフィジカル」展の方が、普通に楽しめる。ルイジ・ギッリというイタリアの写真家の名前は聞いたことがあったが、まとめて見るのは初めて。
前半の「見ること」を問いかけるような1970年代の実験的な作風から、後半の1990年頃のジョルジョ・モランディやアルド・ロッシのアトリエを撮った静かな連作まで、基本的に見る快楽を与えてくれる写真が並ぶ。これはまさに作品を買って買って家で眺めていたい。
「トランスフィジカル」展は5つのテーマでそれぞれ学芸員が所蔵作品から選ぶもの。アジェもメイプルソープもシンディ・シャーマンも東松照明も森村泰昌も何でもある。の方式の展覧会は前もあったが、全体にバラバラで、やはり1人の学芸員が選ぶ方がおもしろい。
この美術館では映画の展覧会よりは、普通の写真展を見たい。
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