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2025年10月20日 (月)

山形に少しだけ:その(3)

山形ではコンペは2本しか見なかった。イグナシオ・アグエロ監督の『亡き両親への手紙』はちょっと失望した。この監督は『100人の子供たちが列車を待っている』が1989年の第一回映画祭で上映され、その後映画館でも公開された。

これは子供映画教室を撮影した感動作だったが、そしてその後も山形では『サンティアゴの扉』や『ある映画のための覚書』が上映された。この2本はかなり自分語りになっていて当惑したが、それなりに見ごたえはあった。

今回は両親の思い出を語るものだが、父の思い出を語る老人が固定ショットでえんえんと写されるあたりで退屈になってきた。そこにかつて自分が作った映画の断片や自分の庭や家の情景が挿み込まれる。基本にあるのはピノチョト大統領の軍事クーデターとその後の軍事政権による抑圧がテーマだが、その事実をよく知らない日本人にはわかりにくい。

今回は70歳を過ぎた監督の頭に浮かぶことや見えるものを並べてインタビューを加えた感じで、106分が限りなく長く感じた。受賞結果を見たら審査員特別賞だったが、これはこれまでのキャリアに対する名誉賞かもしれない。

もう1本はポルトガルのモーレン・ファゼンデイロ監督の『季節』で、こちらは無冠に終わったがそれなりに魅力を感じた。見たのは、この監督が現在公開中の傑作『グランドツアーの』ミゲル・ゴメス監督のパートナーだという情報によるものだった。ゴメス監督は取材のために東京に滞在した後、山形入りしたファゼンデイロ監督に同行していた。

ポルトガルのアレンテージョ地方に広がる巨石墓(ドルメン)を写しながら、第二次世界大戦中にこの墓を調査したドイツ人考古学者の手紙が読み上げられる。古代の墓の物語にナチス支配下のドイツのファシズムとポルトガルのサラザール独裁政権の記憶が重なり、現代の朽ち果てた荒野に染み入ってゆく。

感情移入できるような映画ではないが、考古学が20世紀の歴史や現代社会と絡み合う不思議な感覚を感じることができた。奇妙な物語を語るミゲル・ゴメス監督の映画と全く違うけれど、どこかその視野の巨大さが通底している気がした。

上映は山形市民会館の方で、上映後はロビーでの質疑応答に少し参加した。ミゲル・ゴメス監督は離れた場所で見守っている感じだった。

 

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