1年ぶりのヨーロッパ:その(7)
パリ、ブリュッセルから戻ってひと月になるが、まだ触れていない美術展がいくつかあるのでもう1回だけ。去年、5年ぶりにパリに行ってルーヴル美術館やポンピドゥー・センターの常設展を見た。特にルーヴルは「モナリザ」などの部屋を除けばガラガラなので、名画を見ながら何とも豊かな時間を過ごせた。今回はオルセー美術館の常設を見た。
さすがにゴッホやルノワールのある一番上の階は観客が多い。「モナリザ」ほどではないにしても。驚いたのは若い中国人や韓国人のグループが熱心に母国語の解説を聞いていたこと。日本人はほとんどいない。もはや日本人には「教養」は意味がないのだろう。
そしてアングルやドラクロア、クールベ、コローなど印象派の前の写実主義の絵画の前はガラガラで気持ちがいい。オルセーはルーヴルほどは広くないので入口のあたりは相当混んでいるが、いったん中に入れば大丈夫。印象派以外はゆっくり見られる。
常設と言えば、初めてプチ・パレの常設展を見た。向かいにあるグラン・パレでは大きな企画展やアートフェアをやっているが、こちらはなぜか行ったことがなかった。通常は企画展もやっているようだが、9月初めは常設のみ。これがなかなかの見ごたえ。ギリシャ時代から17世紀のオランダ絵画、そして18世紀、19世紀とある。
レンブラント、クロード・ロラン、アングル、ブルーデルなどの優品があるが、全部見て回っても2時間くらいか。丸い窓から見える庭も美しく、極上の時間が過ごせた。
初めての常設と言えば、プチ・パレと同じくパリ市が運営しているカルナヴァレ美術館が圧巻だった。ここは長らく改装中で一度も行ったことがなかった。歴史博物館だが、石器時代から現代まで所狭しと作品を詰め込んでいる。2時間ほど見ても終わらない感じでもう1度行きたい。江戸東京博物館のようなジオラマは少なく、あくまでモノで見せているのがよかった。18世紀のカフェの看板まであるのだから。
カルナヴァレの前に近くのピカソ美術館に行った。ここは常設のほかに小さな企画展でラテン系の現代作家を紹介する。ブラジルの女性作家だったが、1階のかつて常設の一番いい場所を閉めていたのが残念。かつて企画展は地下だったが。かつてここの収蔵作品展を東京でやった私は常設はもう見飽きたので足早に過ぎた。快適な庭に出るのに地下に行くのも不便になった。
「ユーフォリア!」展とは別の日にグラン・パレで「ニキ・ド・サンファール、ジャン・ティンゲリ、ポンテュス・フルテン」展を見た。これは閉鎖するポンピドゥー・センターとグラン・パレの共同企画。驚いたのはニキ・ド・サンファールの若い頃の美女ぶり。ティンゲリが靡いたのもよくわかる。
フルテンはポンピドゥー・センター国立近代美術館の初代館長だが、スウェーデン人。彼がこの二人の活動を支えたという。展覧会はニキ・ド・サンファールの作品の存在感が圧倒的。ティンゲリは今では動かせないものばかりで、ちょっと見劣りがした。これにてパリ、ブリュッセルはおしまい。
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