ネリ―・カプランとは
名前は聞いたことがあった。ネリー・カプランは1980年代から90年代のパリで「知る人ぞ知る」ような感じの女性監督だったと記憶するが、1本も見たことがなかった。今度この監督の作品が12月26日から4本まとめて公開されるという。
気になったので、最初の長編『海賊のフィアンセ』(1969)の試写を見に行った。来ているジャーナリストや評論家が、いかにも通好みや曲者ぞろいでおかしかった。プレス資料によれば、1931年生まれというからゴダールやトリュフォーと同じ世代だが、生まれはアルゼンチンのブエノス・アイレス。
この作品がネリー・カプランの最初の長編劇映画で、主演はベルナデット・ラフォン。トリュフォーの最初の短編『あこがれ』(1958)やシャブロルの最初の長編『美しきセルジュ』(1959)の主要人物である魅惑的な娘を演じている。あるいは本作の後の『ママと娼婦』(1973)で嫉妬深い年上の女を演じる。
その意味ではヌーヴェル・ヴァーグの延長線上にあるはずだが、始まると田舎で古くさいコメディが始まって驚く。彼女が演じるマリーは母と一緒にある家に拾われてあらゆる雑用を引き受けている。しかし交通事故で母がなくなると「自然死」とされたためにマリーは怒り、村中の男を相手に娼婦として金を儲けだす。
マリーはあばら家の中に、男たちからせしめたお金で好きな絵や本やポスターを集め、まるでヒッピーのような暮らしを始める。そのうえ、もともと彼女と母親が居候した女主人イレーヌはマリーのことが大好きで、彼女と寝ることが楽しみだった。
彼女は男たちから集めた金でテープレコーダーを買い、ベッドでの男たちの声を録音する。ある日マリーは教会でそれを流し、村は大混乱となる。男たちは彼女の家に向かうが、そこは火事ですべは燃えてしまい、マリーは旅立つ。
終わりまで見ると好き勝手に生きる自由奔放なベルナデット・ラフォンの姿が際立ってきて、これもヌーヴェル・ヴァーグかなとも思う。売春を武器としている部分は古いのかもしれないが、寄ってくるたちとの性交はほとんどカリカチュアのように見せられるし、女主人とのレズもある。ある種の五月革命後の破壊的倫理観も感じる。
当時30歳を過ぎたばかりのベルナデット・ラフォンがそのすばらしい裸体も含めて魅力たっぷり。彼女のユートピア的な生き方によってこの映画には自由が漲っている。
さてネリー・カプランの4本を配給するのは、今年、メーサローシュ・マールタの特集第二弾をやる東映ビデオだ。あの会社で何が起こっているのだろうか?
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