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2025年11月27日 (木)

少しだけ東京フィルメックス

今年も東京フィルメックスが開かれている。去年(あるいは一昨年?)からいわゆるチラシは作らず、10頁ほどのリーフレットを少部数作って無料で配布している。その分、カタログもなくなった。会場もかつての定番の朝日ホールから去年は丸の内東映となり、今年は週末連休は朝日ホール、平日はヒューマントラストシネマ有楽町。

市山尚三さんが東京国際映画祭のプログラミング・ディレクターとなってからは、今年、リティ・パンやアモス・ギタイをコンペのワールドプレミアで見せたように、フィルメックスからはスターがいなくなったように見えるが、そんなことはない。

リーフレットには、モーリス・スリヤ、ツァイ・ミンリャン、ナダヴ・ラピドといった国際映画祭の異端児たちが特別招待作品に選ばれ、コンペの作品もおもしろそうだ。たぶん「ワールドプレミア」という枠をはずせば、おもしろい作品は無限に出てくるのだろう。

今回は私個人はいろいろ用事が重なるうえ、東京日仏学院の「フランス実験映画祭」のマルセル・アヌーン作品は必見なので、ほとんど見られない。空いた時間に見たのはイスラエル生まれのナダヴ・ラピドの『Yes』だが、実に見ごたえがあった。

この監督は『シノニムズ』(2019)でベルリンの金熊賞を取って、一躍有名になった。日本では1本も劇場公開されていないが、その非凡な映像感覚は『Yes』でもたっぷり見られる。40代のイスラエルの売れない音楽家のYが、2023年10月7日のハマスによるイスラエル襲撃後、愛国歌の作曲を頼まれる。

映画は、その前と引き受けてからのYの見る世界を幻想的に描く。ポイントはYと愛し合っていたジャスミンが少しずつ離れてゆくこと。そのうえ、悩みながら政府の仕事を進めるYの前に、昔好きだった女性が現れる。Yはいよいよ混乱するが、ジャスミンとの別れは決定的となる。

実際のガザの映像も見せながら、Yのさすらいが夢のように見せられる。とにかく150分間、混乱し続ける映像を最後まで見せ切る力量は相当のものだ。せめてこの監督の『シノニムズ』くらいは公開されるといいのだが。

かつて、シンガポールはテレビ産業はあっても映画は作らない国だった。ところが最近は実におもしろい映画が出てきている。コンペのタン・スーヨウ監督の長編デビュー作『アメーバ』は、エリート女子高に転向した16歳と彼女が仲良くなる3人を描いたものだが、何とも瑞々しい映像に満ちている。

彼女たち自身も劇中でカメラを持って映像を撮っており、見ている私は、展開する生々しい女子高群像に、いったいこれは映画なのか、彼女たちが自由に撮ったドキュメンタリーなのかと思ってしまった。大都市シンガポールの息詰まる日常が刻一刻と伝わる。彼女たちは大半が英語で話すが、老人たちは中国語。間違いなく今後活躍する女性監督の登場だ。

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