『観る技術、読む技術、書く技術。』に驚く
北村匡平さんから新著『観る技術、読む技術、書く技術。』を送っていただき、すぐに読んだ。大きな活字で手触りのよい装丁だったこともあるが、中身に関心があったから。私は長年映画を見て、本を読む生活を続けてきたが、「書く」ことには自信がなかった。
最初の職場も次の新聞社の事業部も、原稿というのは自分が書くものではなく、専門家に依頼するものだった。もちろん人に頼むには見識がないといけないから、本は読んでいた。新聞社の最後の1年半に記者をやったが、やはり新聞の短い記事は「書く」よりもネタの仕入れ、つまり取材が中心だったからちょっと違う。
教え始めてから本を書かねばと思ってはいたが、単著を書き始めたのは最近のこと。北村さんは私より20歳ほど若いが、最初の『スター女優の文化社会学』が8年前だから私より早い。それから映画で何冊も書き、さらに音楽とか遊具とかの本まで書いている。一体どうやって書いているのか気になっていた。
読んで思ったのは、私と似た部分もあるが大半は全く違うしつらえというか、真剣に書く環境を備えているということ。似た部分は、朝が一番頭が働くというところ。しかし「短めのエッセイや論考はこの時間に進め、午後は頭の休息がてらメールや事務作業をまとめて片付けます」というような合理的な割り振りは、私は考えていなかった。
もう1つ似ているのは、読んだ本や見た映画をメモに残すこと。私はこのブログがそうで、後でそれなりに役立つし、たまに読んだ人からの反応や原稿の依頼もある。彼はアイデアを思いつくとワードでファイルを作り、時には写真や動画も残すという。やはり徹底している。
一番の違いは、映画や本の整理方法。彼は配信5つ以外に衛星劇場など6つのチャンネルに契約して週に20~30本を録画し、購入したDVDと共にエクセルで一括管理をしており、約5000本がたちどころに取り出せるようだ。私は録画はしないし、大量に購入したDVDはどこに置いたかわからずにいつも探しているのに。
本も同じで本棚に分野別、監督別や俳優別にインデックスを付けて整然と本が並ぶ彼の研究室の写真があって驚いた。さらに重要な本はスキャナーを使って本をデータ化し、クラウドに保存して自宅でも大学でもアクセス可能にし、OCRをかけて文字情報も検索できるという。
さらに、書く時には拡張モニターを使って、書く画面と資料の画面を分ける。文章はあるソフトを使ってクラウドでタブレットやスマホでも書けるようにして、疲れたらソファに座ってスマホで書くこともあるようだ。いやはや、すごいなあ。
書くのはノートパソコンのワード1本槍で、映像や本は全くの無整理で探すのに何十分もかけている私は、もはや原始人である。それでも私はこれを続けるしかないだろう。せめて朝、頭の冴えた時にメールやブログを書くのはやめようかな。いずれにせよ、北村さん式の「知的生産の技術」は21世紀の映像研究者の姿だろう。
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