『レンタル・ファミリー』の味わい
HIKARI監督の『レンタル・ファミリー』を劇場で見た。実は自宅近くの神楽坂通りの一角に少し前からこの映画のポスターが貼ってあって気になっていた。そのポスターには、神楽坂で毎年秋に行われる「化け猫」イベントに参加するアメリカ人俳優のブレンダン・フレイザーが写っていた。
大阪生まれで10代からアメリカに住む監督のHIKARIは、『37セカンド』が強烈な印象を残した。さて今度はブレンダン・フレイザーというハリウッド・スターの出演で、さらに彼が日本で暮らす姿を見せるというので興味があった。
アメリカ人俳優が日本でてんやわんやという映画は、これまでいくらでもある。『東京暗黒街 竹の家』(1955)から『G.I.ジョー』(2021)まで。さらに家族の代わりをする「レンタル・ファミリー」をテーマにした邦画もあった。
ところがこの映画は、そのどれとも似ていない。満員電車や終盤の桜のシーンなどは従来のアメリカ人監督の感覚だが、京都や奈良ではなく島原や天草を出し、都電荒川線や神楽坂の祭に触れるなど細かい。マンションのいくつもの部屋でさまざまな暮らしを営む日本人を少し離れたところから見せるショットなど、ちょうど『パーフェクト・デイズ』に通じる今風の繊細さだ。
ブレンダン・フレイザー演じるフィリップは日本で「外人役」をする俳優をしながら7年も住んでいるが、いまだにまともな役にありつけない。「レンタル・ファミリー」の社長、多田(平岳大)に出会って、依頼主に応じてさまざまな役をやることになる。中心は、老いた大物俳優(柄本明)を取材する外国人記者と、ハーフの少女、ミアの小学校受験のために突然戻ってきた父親の役だ。
大物俳優とは意気投合して、家族に内緒で彼の出身地の天草まで一緒に行くし、ミアとは心が触れ合って別れがたくなる。日本人ではなく、アメリカ人が義理を感じて金勘定を普通に乗り越えてしまうというあたりの感覚が実にうまい。そして彼が愛着を持つのはみんな社会から疎外された存在だから、なおさら。
完全なアメリカ資本の映画で、ロケはすべて日本。出てくるのは、日本人もアメリカ人もこれまで描かなかったような、しかし細やかな感性が光る日本である。HIKARIのこの繊細な感覚とドラマ作りのうまさは、ハリウッドでも十分通用するのではないか。
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