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2026年3月15日 (日)

アルフレッド・ジャーのコンセプト力

東京オペラシティアートギャラリーで3月22日まで開催の「アルフレッド・ジャー あなたと私、そして世界のすべての人たち」を見た。美術館での個展はできるだけ見ることにしている。1点や数点ではわからない作り手の世界が見えてくるから。

アルフレッド・ジャーは、昔、必ずヴェネツィア・ビエンナーレに2年に1度(多くは9月の映画祭の時期に)見ていた頃、作品を何度か見たことがあるが、よく覚えていない。だから今回まとめて見られるのはチャンスだと思った。

基本的にそこに見える造形で勝負するアートが好きな私には、今回の個展はちょっとコンセプチュアル過ぎて苦手だったが、どこか心に残るものがあった。まず、なによりカッコいい。

入口右手の廊下に四角のポスターが積んである。「You do not make a photograph. You make it.」とだけ書かれていて来場は1枚ずつ取るように書かれている。全員が私より若い観客は、大事そうに巻いてそれを持ちながら展示を見る。

展示室には、まず消火器の上で大きな地球儀がオレンジ色で光っている。そして壁には「Other People Think」(彼らにも考えがある」と書かれている。この地球志向というか、世界の周辺へのまなざしが全体を貫く。展覧会の題名自体がYou and Me and the Othersだから。

米国の地図を見せて「アメリカではない」、つまり中南米が含まれていないと書いたり、チリのクーデターの何枚もの写真を鏡を用いて見せたり、ブラジルの金鉱の過酷な労働者の写真やボスニア紛争の悲劇を同じようなシステムで見せる。基本には途上国の地獄を現代アートのポップな形に乗せる形。

《サウンド・オブ・サイレンス》は10分強の映像で、始まりからでないと見せてくれない。時間まで待って中に入ると、文字で南ア出身の報道写真家ケヴィン・カーターの人生が語られる。そして彼がピューリツァー賞に輝いたスーダンの子供を撮った写真が1枚だけ出てくる。彼はそれによって苦しみ、自殺したことが語られる。もちろん彼はマスコミによって殺されたわけだが、そうやって先進国社会の罪をスタイリッシュに暴く。

何だかうまくやられた空虚な感じもしたが、上の階の常設で日本の戦後の絵画や版画を見ると落ち着いた。有元利夫、堂本右美、中西夏之、難波田史男、野見山暁治、白髪一雄、山口長男といった画家の作品を見ると、これまでに見た作品や展覧会も思い出されて気持ちがよくなる。

終わりの若手コーナーで見た岩崎奏波のちょっとファンタジーの混じった虫や動物の絵画は軽快だが奥が深い。ここはいつもいい展示をするので楽しみ。この美術館は私にとって、自宅からの距離、大き過ぎない規模、現代性とポップさなど、気分転換にちょうどいい。

 

 

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