« 長持ちの話 | トップページ | 「新版画」に泣く »

2026年3月 7日 (土)

「日韓映画館の旅」とは

「日韓映画館の旅」というチラシがあってよく意味がわからなかったが、その中の『Mr.キム、映画館へ行く』という映画を見に行った。これは長らく釜山国際映画祭のトップを務めていたキム・ドンホさんが撮ったドキュメンタリーというので、興味があった。

彼は釜山映画祭の言わば顔だったが、「映画館に行く」というのはどういうことかと思った。映画はベルリン映画祭に始まって、サウジアラビア、マレーシア、インドネシア、台湾、日本などの映画祭や映画館に彼が行くシーンを見せる。もちろん韓国内も。

そして有名な映画監督や映画関係者に会って、「あなたにとって映画館とは何ですか」と聞いて回る。おもしろいのは彼が3年前に映画用カメラを買って、自分で使い始めること。最初は本当に使い方を教わっている。最初はサウジアラビアのコリアン・タウンに興味があって、撮影に行き、それが各地を訪ねることに。

ドキュメンタリーの形としては、「カメラを持った男」であるキム・ドンホを別途撮影するスタッフがいて、彼が歩き回って話を聞く様子が映画になっている。そこにはダルデンヌ兄弟やモフセン・マフマルバフ、ツァイ・ミンリャン、ブリランテ・メンドーサ、是枝裕和といった著名な人々も出てくる。キム・ドンホが釜山を通じて培った人脈そのもの。

日本ではユーロスペースとイメージフォーラムに加えて高崎市の高崎シネマテークや高崎電気館が出てくる。そこでキム氏が驚くのはコロナ禍でも日本のアート系映画館には7、8割の観客がいたこと、「SAVE THE CINEMA」(映画館を救え!)の運動に3億円も集まったことなど。その関係で深田晃司さんや諏訪敦彦さんも出てきた。

映画が終わってキムさんの舞台挨拶があったが、それに是枝裕和監督がサプライズ参加したのは驚いた。司会は東京国際映画祭でアジア映画を選ぶ石坂健二さんという豪華メンバー。是枝さんは自分の監督作品はすべて釜山映画祭で上映されたという。そして80年代から90年代に自分はアート系の映画館に育てられ、映画監督になって2005年くらいまでは自分の映画はアート系映画館のみで上映されたと語った。

キムさんがこの映画を作ろうと思ったのは、コロナ禍以降観客が劇場に戻らないのを見て、映画館とは何かを考えようと思ったという。そして日本では多様性のある映画を上映することで観客は戻ってきていると説く。日本人としてはこそばゆい話だが、まあ外国を良い例にするのはよくあること。

映画で一番感動したのは、老いたイム・グォンテク監督が出てきた時。調べたら彼は91歳で、キムさんは88歳。キムさんはベトナムのダナンに一緒に行こうと誘う。

石坂さんの説明によれば、「日韓映画館の旅」は、日韓のアート系映画館が互いの国のアート系映画を上映する試みのようだ。この作品はそれにピッタリで、まさに現代の日韓を中心にアジアの映画館をテーマにしている。トークの終わりに石坂さんの言葉に促されて韓国からやってきた映画館の若き支配人たち5、6人が席から立ち上がると、自然と拍手が起きた。何だか涙が出た。

|

« 長持ちの話 | トップページ | 「新版画」に泣く »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 長持ちの話 | トップページ | 「新版画」に泣く »