『アルジェリア戦争』を読む
去年の4月に出した『ヌーヴェル・ヴァーグ 世界の映画を変えた革命』を書きながら気になったことの一つは、フランスのヌーヴェル・ヴァーグの監督たちがどのようにアルジェリア戦争を表現したかであった。
1954年に始まって62年のエヴィアン協定で終結したアルジェリア戦争は、まさにヌーヴェル・ヴァーグの監督たちが短編から始めて長編第一作を発表した時期とぴったり重なる。しかし、一言で言えば、「カイエ・デュ・シネマ」に集った未来の監督たちはゴダールを除くとこの戦争に触れなかった。「左岸派」は『ミュリエル』のアラン・レネを筆頭に何らかの形で表現している。
それはさておき、「アルジェリア戦争」そのものについては、日本では本は多くない。簡単に読める本だと白水社のクセジュ文庫で『アルジェリア戦争』があったが、どうもピンと来ない。最近、黒田友哉著『アルジェリア戦争』が中公新書で出たので読んでみた。副題は「フランスと戦後世界をつくった植民地独立闘争」。
私はなぜフランスが突然アルジェリアに独立を認めたのか、よくわからないでいた。当時はアルジェリアの900万人の人口のうち、100万人がフランスを中心とした欧州の入植者だった。いわゆる「黒い足」=ピエ・ノワールと呼ばれた人々だが、アルジェリアが独立すれば彼らは行き場を失う。
この本によれば独立を認めた理由は3つ。1つは地域情勢で、アラブ諸国の連帯があり、バンドン会議やスエズ戦争以降民族主義者として力を増したナセル率いるエジプトや同じくフランスに支配されたチュニジアとモロッコの支援があった。2つめは国連の圧力で、植民地独立がピークを迎え、国連は残りの国々の独立を応援した。
第三はOASによるフランス本土でのテロとその圧力だった。OAS=秘密軍事組織はアルジェリアの独立を阻止するためのフランス人によるテロ組織で、フランス軍の一部とピエ・ノワールの一部が結束してアルジェリアやパリでアルジェリア解放戦線(FLN)に対してテロを仕掛けていた。
「OASの過激な行動は、フランス政府にとっても直接の脅威だったろう。しかしそれより重要なのは、OASの存在がFLNの正当性を高めたことである。過激なOASの存在のために、FLNはエヴィアン交渉での唯一の正当な代表としての地位を獲得、維持したのである」
ゴダールの『小さな兵隊』はまさに、アルジェリア戦争の徴兵から逃げてOASに雇われた男とFLNに属する女(アンナ・カリーナ)との絶望的な逃避行を描いた作品だった。60年に作られて、3年後にようやく公開された。
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