「テート美術館」展の見せる90年代
国立新美術館で5月11日まで開催の「テート美術館 YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート」展を見た。YBAとは「ヤング・ブリティッシュ・アーティスト」のことで、サッチャー政権末期に現れた英国の新しい美術作家たちに対して1992年に名付けられた言葉だという。
イギリスの「テート美術館」はいくつもの館からなる。ロンドンのテート・ブリテンはターナーの所蔵で有名だが、英国美術を15世紀から現代まで展示する。同じロンドンのテート・モダンは20世紀以降の美術に絞っている。さらに地方のリバプールとセント・アイヴスにも分館がある。
テート・モダンは2000年に発電所跡に開館したが、それまではテート・ブリテンはテート・ギャラリーと呼んでいたはず。私は実はその頃しか行っていないので、テート・モダンはまだ見ていない。
展覧会の入口にフランシス・ベーコンの晩年の大きなトリプティク(三幅対)があり、右手奥にはギルバート&ジョージの大きな絵が見える。その手前にはダミアン・ハーストの立体で、牢獄のような大きな黒い枠の中に横長の机がある。これだけでイギリスの現代美術はカッコいいなあと思ってしまう。
しかしその後は私が知らない作家の作品が1点ずつ並んでいて、なかなか理解は難しい。だから結局これまで作品を見ている作家を中心に時間をかけて見てしまう。例えばヴォルガング・ティルマンスは昨夏ポンピドゥー・センターで大きな個展を見たから、今回何気ない写真が10点ほどあるだけでもありがたみがわかる。
彼はドイツ出身で今もベルリンが本拠地のはずだが、かつてロンドンで活躍してターナー賞ももらっている。彼のテート・モダンの個展用のインタビューのビデオも見た。ポスターで使われている若い男性2人がキスをしている写真は、この作家のものだった。
ビデオのコーナーに、映画監督のデレク・ジャーマンの初期作品をまとめたものもあった。ジャーマンと言えば、大きな油彩も飾ってあってびっくり。絵を描いていたとは知らなかったが、なかなかの力作。ほかに知っている作家だとアニッシュ・カプーアは期待外れの作品か。
そのほか気になったのはコーネリア・パーカーのインスタレーション。いくつもの廃材が宙に浮いた空間の真ん中に光が輝き、影の渦を四方に作り出していた。ジリアン・ウェリングのビデオ作品は、女性が10代の頃の性体験を語るものだが、「セックスはお金がかからなかった」という表現が心に残った。
そういえば、駅貼りのこの展覧会のポスターはジュリアン・オピーのポップなデッサンの男性。黒一色でそこに大きくYBA&BEYONDと書かれ、小さくテート美術館と書かれている。こういうカッコ良すぎる外国風のポスターは昔なら絶対に社内で通らなかったなあと、かつてランカイ屋だった私は思った。
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