『これって生きてる?』に笑う
『これって生きてる?』という題名にはおよそ見る気は起きなかったが、俳優でありながら『アリー/スター誕生』のような秀作を監督したブラッドリー・クーパーだし、金曜夕刊各紙にもいい評が出ていたので、劇場に出かけた。
結果は見てよかった。映画はある朝の中年夫婦の情景から始まるが、「もう別れようか」「そうだね」と話が進む。夫のアレックスは閑静な住宅地にある一戸建て出て一人でニューヨーク市内に住み始め、夜は街を彷徨う。飲み屋に入ろうとするとそこはショーをやるパブで、入場料を取られそうになるが、舞台に上がることで無料に。
さて彼は舞台で自分の別れたいきさつなどをとつとつと語るが、これが意外に受けた。中年だからあくまで自分を馬鹿に見せるコツを知っており、時おり本音を交える。一度うまくいくと、また別の日にトライしてさらに受けてしまい、止まらなくなる。
一方で妻・テス(ローラ・ダーン)はかつてバレーボールのオリンピック選手だったが、コーチの誘いを受けてまんざらでもなさそうだ。ある男から誘いを受けて夜のバーに行くとそこでは夫が演じ出したという次第。ローラ・ダーンの存在感がたっぷりで、中年で太った私でいいのとばかりに前向きだ。
どうなるか先の見えないながらも、妙な余裕とユーモアがあって流れに任せている2人の感じが、かつてのジョン・カサヴェテス監督の映画で、カサヴェテス本人と妻のジーナ・ローランズが演じる場面を思い出させた。「中年夫婦の危機」と言うにはあまりにも楽天的で、成り行き任せ。最近のアメリカ映画にはない洒脱な感じが気に入った。
そして10歳くらいの子供がいい感じで2人の間を行き来する。子供も妙に理解があって見ていて気持ちいい。ありそうでたぶん実際にはない夫婦の話だが、まるで酒の席で話を聞くような感じで笑いながら見ることができる。
たぶん40代の夫婦の話だが、それより20歳上の私が急に舞台に上がって一人語りをする場面を想像した。授業でウケるのと違って、酔った客の前では全くうまくいかない気がする。
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