『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は不思議なSF
フィル・ロード&クリストファー・ミラー共同監督の『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を劇場で見た。もともとSFはあまり得意ではないし、監督も知らないのに見た理由は、予告編をずいぶん前から見て「これはヘンだ」と思ったから。
映画は主人公グレース(ライアン・ゴズリング)が謎の空間で目を覚ますところから始まる。そこはどうも宇宙船の中のようだ。彼がなぜそこにいるのかを思い出しながら、話は遡りつつ進んでゆく。
彼は中学の理科教師だったが、ある日女性科学者ストラット(ザンドラ・ヒューラー)がやってきて宇宙船に乗るよう依頼した。地球の太陽エネルギーが低下して氷河期に向かっており、救うためには別の星にあるエネルギーの素を持ってくるしかないという。かつてグレースはその研究をしていたが、誰も信じてくれず研究から追い出されて教師をしていたのだ。
話の設定にいささか無理がある気がするが、とにかくグレースはその星を見つけてそこに住む異星人ロッキーと遭遇する。まるで岩で作った四本足のロボットのような姿のロッキーと、コンピューターを使っての会話が始まる。これが実に味わい深い。
結局のところグレースはロッキーとの友情のために地球に帰ることを諦めるのだけれど、2時間37分のちょっと長すぎる過程のなかで彼は何度何度も地球時代を思い出す。おかしいのはそこに「家族」や「愛」の影がないこと。普通ならば残してきた妻や子供が必ずと言っていいほどテーマになるのに。
ザンドラ・ヒューラー演じる上司のような女性科学者と恋愛のようなものがあるのかと期待するが、それもない。彼女はひたすらクールに任務を果たすのみだが、カラオケパーティで突然マイクを持って歌いだすシーンなど抜群におかしい。そこで明らかに2人の間にシンパシーが流れる。
結局のところマイペースでお茶目なライアン・ゴズリング演じるにわか宇宙船長の宇宙と記憶の旅にえんえんと付き合うわけだが、それが妙に気持ちがいいから、不思議なSFと言うほかはない。原作があるが読んでいない。何となく、読めば違う感想を持つような気がする。
| 固定リンク
「映画」カテゴリの記事
- 『赤い砂漠』の音と色の強度(2026.09.03)
- 『アニキ・ボボ』のドゥロ河(2026.08.30)
- 美術と映画をめぐって(2026.08.26)
- 岩下志麻『同志として妻として』を読む(2026.08.24)


コメント
時々楽しく拝見させてもらっています。
今回、映画の“オチ”がさりげなく明かされいて、少々驚きました。
もちろん他意はないのでしょうが、今後は控えられた方がよいかとも思い、
僭越ですがメールしました。
悪しからず。
投稿: | 2026年4月10日 (金) 11時48分
私も実は、このアップにやや異議がございます
それは“オチ”の話ではなく、以下の部分です
<おかしいのはそこに「家族」や「愛」の影がないこと
私は原作はまだの人ですが、ちゃんと映画の中で主人公が
辛い別れをし、すでに違う相手が新しい人と結婚している
ことを説明、ロッキーすら「その新しい人キライ」と一言
主人公は絶望の末、独りを選びそして... なんじゃないかと...
ここ寝てたんですか(笑)
投稿: onscreen | 2026年5月 1日 (金) 22時01分
私も実は、このアップにやや異議がございます
それは“オチ”の話ではなく、以下の部分です
<おかしいのはそこに「家族」や「愛」の影がないこと
私は原作は未だ読破中の人ですが、ちゃんと映画の中で
主人公が辛い別れをし、すでに違う相手が新しい人と
結婚していることを説明しています
ロッキーすら「その新しい人キライ」と一言
主人公は絶望の末独りを選びそして... なんじゃないかと...
ここ寝てたんですか(笑)
投稿: onscreen | 2026年6月 9日 (火) 19時07分