驚異のフラマルティーノ:続く
先日書いたイタリア映画『地底への旅』(2021)の監督、ミケランジェロ・フラマルティーノは、長編はたったの3本しか作っていない。数年前に見た『四つのいのち』(2010)の前の長編デビュー作が『おくりもの』(2003)である。
これがまた驚異的な映画だ。3本見るとこの監督はすべて南部のカラブリアを舞台にしながらも1作ごとに全く異なる設えを作ることがわかるが、これはその基礎編ともいうべき作品。
暗闇で何やら犬や鶏の鳴き声が聞こえる。家の戸が少し開き、外から光が入る。中にいた老人は、外に出て歩き出す。犬がいるが、相当弱っているようだ。外には2人の少年がいて、老人に頼まれて働いているのか、老人はその1人に金を渡している。
ところが少年は携帯電話を老人の家に忘れていた。そのうえ、裸の男女が写っている写真の大判コピーも残されていた。時おり携帯は鳴るが、老人は出ない。時々写真を眺めている。
街には自転車に乗った若い女がいる。老人が理髪店で髪を切り、髭を剃ってもらう。そこには裸の女のポスターがあった。髭剃りが終わった頃に自転車の女がやってきて、入れ替わりに店に入る。主人は入口や窓を閉めた。
その女が自転車に乗っていると車に乗った中年男が声をかけ、自転車を車に積んで女を車内に引き込む。女は車内で男に押し倒されている。その後、女は老婆2人と家の中にいるのは非難されているのか。
街は丘の上に立つ。お祭りなのか楽隊がやってきて行進をしている。そして海にも近い。女は砂浜を歩いている。老人は鶏に餌をやる。突然コンピューターの前に会社員風の男がいて驚くが、郵便局だった。老人はお金を下ろし、一部を自宅のそばで少年に渡す。忘れていた携帯も。
ある時、女は老人の自宅にいた。服を脱いで胸をあらわにするが、老人は彼女の分のワインを注ぎ、パンを切って渡す。女は服を着てワインを飲む。老人は外に出て、少年たちが掘った穴に入る。このまま死んでゆくのか。
すべて固定ショットで撮られた老人の家も、丘の上の街も、道も海も海岸もすべてが澄みきった色調で、そこに犬や鶏や鳥の鳴き声、海の波の音、車や自転車の音などが絶えず混じりあう。もはや死ぬだけの老人が最後の日々を過ごす。そこにはなぜか若い女の影が付きまとう。これは夢か現実か。
驚異の監督、ミケランジェロ・フランマルチーノの3作品の上映が6月19日から始まる。ひょっとすると今年最大の事件かもしれない。
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