「イタリア映画祭」も数本
ヴェネツィア国際映画祭にはもう行かなくなったし、東京国際映画祭さえも見る本数は減った。この歳になると、「映画祭」で大量に新作映画を見てもしょうがないという思いは強くなる。それでも「イタリア映画祭」は自分が始めたせいか、やはり気になる。
まずイタリア文化会館のプレミア上映で見たのが『スイートハート』。1979年生まれの女性監督マルゲリータ・スパンピナートの長編第一作だが、題名通りほのぼのとしてかつ爽やかな作品。「北部」に住む少年ニコは、夏休みの間、シチリアの海辺の町の大伯母ジェーラの家に預けられる。冒頭はニコが空港から降り立って、嫌そうにジェーラに会うシーン。
ジェーラも歓迎している風ではない。ジェーラの住むのは昔は御殿だったような真ん中に大きな中庭のある建物の一角。そこには彼女と同じような老女たちが住み、中庭に集まっている。ニコはWIFIもないこの家に驚き、「中世に来たみたい」と言う。最初は近所の子供たちと距離を取っていたが、ローザという少女と偶然仲良くなる。
ニコとローザはジェーラの家を探検するうちに彼女の若い頃の写真を見つけ、隠された秘密に近づく。一方でニコは大好きなベイビーシッターだったが結婚したヴィオレッタへの思いから、ようやく立ち直り始める。都会の少年が田舎で人間らしさを取り戻すという定番ではあるが、少年や老女の変化を繊細に捉えて丁寧に仕上げた佳作。
次に見たのがマリオ・マルトーネ監督『外の世界』。これはベテラン監督で彼の作品はイタリア映画祭で何度も上映した。今回はカンヌのコンペに出たもので、ヴァレリア・ゴリーノが刑務所に入った実在の作家、ゴリアルダ・サピエンツァを演じる。
冒頭に刑務所に入って全裸にされるゴリーノが出てきて驚くが、映画は刑務所の前、刑務所の中、そして出獄後の彼女を自由に行き来する。ヘロイン中毒のロベルタや犯罪者の恋人を助けたバルバラなど、魅力的な囚人たちが続々と出てくる。気まぐれな女たちの出口のない暗い世界が単調に続くが、さすがマルトーネ監督で味わい深い。
この監督は長編だけでも10本以上作っているのに1本も日本で劇場公開されていない。この作品はたぶん難しいが、私が大好きな『戦争のリハーサル』(1998)や『笑いの王』(2021)などはせめて配信で見せて欲しい。
6月19日公開のフェルザン・オズペテク監督『ダイアモンド 私たちの衣装工房』はさすがに劇場公開が決まっているだけあって見やすい。これについては後日。
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