初期アサイヤスに震える:さらに続き『感傷的な運命』
少し前になるが、東京日仏学院でオリヴィエ・アサイヤスの『感傷的な運命』(2000)を見た。かつてたぶん同じ場所で見た時は本当に傑作だと思ったけれど、日本では劇場公開されずフランスでもさほど評価されていなかったと思う。
今回再見して、昔ほどの感動はなかったがやはり力作だと思った。それに自分が定年前で人生を振り返る時期に来たせいか、シャルル・ベルラン演じるジャンが妻を変え、仕事を移りながら懸命に生き、そして老いてゆく姿が妙にリアルに感じた。3時間とは言え、半世紀ほどを実に多くの人物と共に描くが、一人の人間の生き方として筋が通って見えた。
冒頭、ジャンは牧師として墓地である葬式を仕切っている。彼は妻(イザベル・ユペール)との間に娘がいるが、妻が不倫をしたためにお金を渡して別居させる。周囲の目もあっていったんは引き取るが、正式に離婚してポーリーヌ(エマニュエル・ベアール)と結婚する。
舞台はコニャック地方で、ジャンはコニャックを生産する一族の親戚のようだ。彼らが知り合うときの豪華なパーティはヴィスコンティの『山猫』を思わせるが、よりアップが多く人間模様を見せる。
イザベル・ユペールは自分だけが大事な女がぴったりで、エマニュエル・ベアールは情の深さを全身で見せる。ジャンは牧師をやめてポーリーヌとスイスの山奥で暮らし始めるが、しばらくするとジャンに対して一族が持つリエージュの陶器工場の経営が任される。
その工場のシーンがすばらしい。何百人という人々が働いて陶器を作っていく様子が細かに描かれる。ジャンは新しい工場を作って米国市場を狙うが、第一次世界大戦が始まる。ジャンも召集されるが、映画は塹壕や戦車など戦場まできちんと見せる。ポーリーヌは看護婦として働く。
戦争が終わり、ジャンは戻ってきて再び働き始める。再度アメリカ市場を狙って努力を重ねるが、世界恐慌が起こってしまい、海外への進出はいったん取りやめとなる。ジャンの長年にわたる経営改革はたいした成果をもたらさないまま、工場はつぶれかける。ある時、アメリカの買い手に工場を案内していたジャンは倒れる。
亡くなる前にジャンは妻に言う。「いろんなことをしたがすべて無駄だった。君への愛だけが意味があった」。そういえば後半にジャンが最初の妻の娘アリーヌを訪ねるシーンもいい。アリーヌを演じるのは例によってミア・ハンセン=ラヴで、最初は不良少女として現れ、次には修道院に入った真面目な娘として出てくる。それを見届けるジャン。
登場人物が多すぎてまとまりは悪いが、こんな大河ドラマを巧みに統率して仕上げる演出力に感嘆した。
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