『ロストランド』の圧倒的なリアリティ
藤元明緒監督の『LOST LAND/ロストランド』を初日の劇場で見た。配給会社の方に会うので普通は初日には行かないが、出演しているロヒンギャの子供たちがオンラインでトークに参加すると聞いて、興味がわいた。
この監督は『僕の帰る場所』で在日ミャンマー人家族の日々を描き、『海辺の彼女たち』で日本にベトナムから来た女性実習生たちの彷徨を見せた。いずれも居場所のない人々の物語で、今回はロヒンギャ難民の姉弟の放浪を描く。初めて舞台が日本ではなくなったが、どうなるか心配だった。
さらに彼のやり方は当事者を使って劇映画を作るというものだ。つまり事情をよく知っている者が、ある意味で確信犯的にその実態をさらす。ところが今回は子供2人が主人公というから、どうだろうかとも思った。
映画は5歳のシャフィと9歳のソミーラがかくれんぼをするところから始まる。そこがどこかも、なぜそこにいるかも一切わからない。実は名前も年齢もチラシを見ながら書いていて、たぶん最後までわからない。状況の説明をしないというのはこの監督の前二作もそうだった。
彼らは叔母と共にミャンマーに行くことになる。親戚の男が密航業者に金を払い、彼らは漁船に乗り込む。二十人くらいいただろうか。岸に着くと降りて歩かされる。それから別の業者に引き継がれるが、そこで叔母とは別れてしまう。2人はそこからも逃れて歩き始める。姉はある家のリヤカーを見つけて弟を乗せて歩き出す。
驚くのはちゃんと彼らを助ける人もいることだ。ここはタイでマレーシアに行くための手はずを整えようとする。観客が見えるのは、あくまで歩いてゆく姉弟と彼らの見る周囲だけで、いったい本当にマレーシアに向かっているのか、そもそもなぜマレーシアに行くのかもよくわからない。だけど見ているうちに、その切実さと辛さは自分のことのように思えてくる。
見終わって姉弟がオンラインで出てきた。撮影について聞かれても「楽しかった」とか簡単な返事ばかり。それでも二人とも明るくはしゃいで観客に両手を振る。どこにでもいるような子供だったことに、安心した。また質問した観客のうち、日本に20年いるミャンマー人女性の質問というか言葉も心に残った。
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