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2026年6月23日 (火)

『黒牢城』の無限の会話

黒沢清監督の『黒牢城』を劇場で見た。戦国時代の時代劇だがアクションは少なく、ひたすら城の中での荒木村重が周囲と交わす会話がえんえんと続く。最初は、実に多くの人名が織りなす人間関係がわからないままの無限の会話に途方に暮れた。

冒頭、織田信長に反旗を翻して有岡城に籠城する荒木村重(本木雅弘)のもとへ、使者・黒田官兵衛(菅田将暉)が説得にやってくるが、村重は官兵衛を突然拘束して地下牢に入れる。この唐突な感じは悪くない。そのうえ、村重が何を考えているか全く見えない。

ところがそれから起きる事件がよくわからない。「冬:自念」では捕らえられていた敵の人質の少年・自念は密室の中で矢に刺される。ほんの小さな襖の隙間から矢が入ったのかどうなのか。

次の「春:生首」では、攻めてきた隊を小隊を村重率いる軍団が打ち破る。4人の生首が並ぶが誰か判然としない。さらに大将の永昌の首を取ったのが誰かわからないが、どうも村重のようでもある。

「夏:寅申(とらさる)」は、村重が大事にする茶壷「寅申」を信長に献じようと無辺(荒川良々)を送るが、殺されてしまう。村重は慌てるが、殺した能登入道の目的は「寅申」を盗むことではなかった。能登は明智光秀と組むという自分の計画を明らかにするが、何者かに殺されたうえで、雷が落ちる。

「秋:天罰」では村重は既に官兵衛と飲み友達になっている。郡十右衛門(オダギリジョー)は能登を撃った者は逃げることが困難で、城中に内通者がいると指摘。そこで浮かび上がったのが村重の妻、千代保(吉高由里子)。

「夏」のあたりから次第に輪郭というか、企みが少しずつ露呈してゆき、最後の妻の告白で一挙に解決する。そのあたりはゾクゾクしたが、そこに至るまでは人の名前が多すぎて覚えられないし、それ以上に村重の謎の落ち着きや官兵衛の敵か味方かわからない振る舞いに戸惑う。さらに妻もあえて曖昧に描かれている。

確かに城は全体も細部もリアルだし、とりわけ地下牢の美術は迫力があるのだけれど、あえてわかりにくさを平気でどこまでも押し通す感じがした。それが時代劇を初めて撮った黒沢清の作家性なのだろうが、私は最後まで乗り損なった気もした。もう一度見ると傑作と思うかも。

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