チュルリョーニスの魅惑
6月14日まで国立西洋美術館で開催のチュルリョーニスの個展を見た。このリトアニアの画家の個展はかつて池袋にあった西武美術館で見たはずだが、その時はもうセゾン美術館と呼んでいたかもしれない。
その時なぜ見たかと言えば、たぶんジョナス・メカスの映画を見てリトアニアに興味があったからだと思う。あるいは学生時代に行った利賀村の演劇祭で、リトアニアの演劇を見たからかもしれない。この国には何かある気がした。
今回見に行って、まず彼が音楽家だったことに驚いた。かつての個展でも触れていたに違いないが、覚えていない。リトアニア生まれでポーランドのワルシャワ音楽院で学び、さらにドイツのライプツィヒ音楽院にも行っている。その後にワルシャワの美術学校で絵を描く。
絵画の題名にも「ソナタ」や「プレリュード」などの音楽用語が並ぶ。時代は1900年から10年頃が中心で、描くのは象徴主義というか文学的なテーマのちょっと幻想的な内容だ。ポスターなどにも使われている《祭壇》(1909)は、上に行くほど小さくなる四角の箱が4つ積み上げられた建物がある。
その側面には古代エジプト風の絵が描かれている。祭壇のようだが、そこに人が住む宮殿のようでもある。一番上の箱からは煙が出ている。そしてその周りは砂漠のような大地が広がっている。そこには川の流れのようなものも見て取れる。
『祭壇』は昼間の寂しい光景だが、同じ年の『リトアニアの墓地』は夜。手前に墓石のようなものが並び、奥には不思議な形をした樹木が並ぶ。私には『祭壇』よりずっと楽しそうに見えた。まるで「ゲゲゲの鬼太郎」の歌の「夜は墓場で運動会!」のようだ。
こうした神話的象徴世界が最後まで続く。ほとんどの絵は小さいため、展覧会ではよく見えにくい。これはむしろカタログを買って家を楽しむべき展覧会かと思ったが、もはやカタログを置く場所が家にはない。今、ホームページを見ながら書いているが、その方が展覧会で見るよりよく見える気さえした。
この展覧会は80点ほどで小さいせいか、企画展示室ではもう一つ「北斎 冨嶽三十六景 井内コレクションより」という展覧会があった。こちらは見慣れたものばかりだが、やはり北斎はチュルリョーニスよりずっとメリハリがあって楽しい。
それから常設も駆け足で見た。こちらは年々新収蔵作品が増えて、本当に中世からルネサンス、バロック、ロマン主義、写実主義そして印象派までヨーロッパ絵画史が一望に見えるようになってきたと思う。
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