スマホの魔力
地下鉄に乗ると、周囲が全員スマホを触っていることがある。チラリと見ると、男はゲームが多く、女はSNSが多数。あるいは漫画やドラマも増えた。私は電車の中では急ぎで何かを確認する時以外は、スマホは触らない。本を取り出して読む姿は、ほぼ宇宙人かもしれない。
大学の授業でも50人を超す講義形式だともうダメで、みんな時々下を見てはスマホを触る。あるいはむしろ、スマホの合間に時々前を見ているという方が正確かもしれない。私が「どう思いますか」と言って学生を見ると、多くはキョトンとした顔を上げて何が起こったのかと周囲を見ている。
授業でDVDを見せる時には、私は短くても真っ暗にする。そうしないと集中できないと思うから。すると200人の授業で30個はスマホの明かりがきらめき、数秒後に真っ暗になる。授業を聞いていないから「今から映像を見せます」と言ってもダメで、暗くしてようやく気づく。
それから明るくして授業をする。10分後にまたDVDを見せようと暗くすると同じような数のスマホが光っている。たぶん数分でもスマホを見ないと落ち着かない者のだろう。明るくすると慌てて、あるいは嬉々としてスマホを叩く姿が、教壇から手に取るように見える。
私は「芸術を創作することを希望する者は、それではダメですよ」と根拠のあるような、ないようなことを言う。「落ち着いてものを考えられなくなりますよ」と。小さい頃からスマホを見続けると脳の機能が低下するというのは本当のようだが、20歳の若者はどうなのだろうか。
そんなことを学生に言う手前、私は意地でも人前ではスマホを触らない。たまに急ぎのメールを確認するくらいにしている。電車の中でも同じで、本を読むか、目をつむるか。最近疲れた時は駅が3つあれば眠ることができるようになったので、目を閉じることが増えた。
ところが、自宅に帰るとすぐにラインを見る。その後にフェイスブックやXを見る。特に最近はXの「おすすめ」に流れてくるものを見ることが多くなった。アルゴリズムで私が興味のある映画関係、大学関連、国際情勢のかなり興味深い情報が流れてくる。そのうえ、Grokによる自動翻訳もあるので、韓国語、中国語、アラビア語などの投稿もすぐに読める。
これはおもしろくて、読んでいるとすぐに5分が過ぎる。そのうえ毎秒ごとに世界中から新しい情報が来るから飽きない。ある時、大学の研究室でドアを開けてやっていたら、やって来た学生に「先生もスマホやってますねえ」と言われてしまった。
あと少しで65歳になるので、これを機会に「やはりスマホは見ない」を実行しようと思う。残された時間は少ないので、そんな場合ではないはず。
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