あっと驚く『シラート』
スペインのオリベル・ラシュ監督の『シラート』を劇場で見た。あっと驚く展開で、まさかまさかと続いてゆく。もともとこのブログではネタばれはあまり気にしていないが(映画はネタではないので)、今回はこの展開を書かないと論じることは無理なので書く。ネタが好きな人は読まない方がいいかも。
いきなり数百人が踊る野外のレイブパーティのシーンから始まる。見ている観客の体まで揺れるような大音響は、映画館で見ないとわからないだろうと思う。踊っている多種多様な人々はいかにもこの種のイベントに慣れた感じで、思い思いに楽しそうに体を動かす。
ところがそこに現れた父親ルイスと10歳ほどの息子エステバンは、まったくその場に似合わない。彼らはレイブパーティーに行くと言っていなくなった娘を探しており、顔写真入りのチラシを配って回る。しかしみんな首をかしげるばかり。それでもチラシを持たせて、また聞いて回る。
そこはモロッコの荒野で、次のパーティは砂漠の中らしい。みんなは踊りながら移動を始めるが、突然軍隊がやってきて中止させられる。一斉に解散して散り散りになるが、数名は2台の大型車にスピーカーなどを積んで逃げ出す。親子も車で後を追う。何のために、そしてどこに行くのか。
川を渡ったり、崖を登ったり、いったいどこに行くのか、何のために行くのかわからない。大型車2台には30代から40代の男3人、女2人が乗っていて、親子は次第に仲良くなっていく。ところがそこから突然に悲劇の連鎖が始まる。
息子を車に残して男女と話していたルイスは、息子の乗った車が急にバックし始めて坂道を下り、崖から落ちてしまうのを見る。嘆き悲しむルイスを男女は慰め、さらに先へと進む。するといつのまにか地雷原に迷い込み、男女が次々に地雷を踏んで飛び散ってしまう。
生き残ったのはルイスと2人の男女。ラストには彼ら3人がどうにか列車にたどりついて、乗り込んだ姿が写る。いったい彼らは何のために旅に出たのか、そもそも親子の探す娘の行方は最後まで手がかりさえ見えない。なぜか悲劇に向かって突き進む姿は、まるで人類の終わりのようでもある。
サスペンスでもなく、アクションでもない。かといって、アントニオーニのような不条理劇とも違う。期待を裏切り続ける衝撃が続き、途方に暮れる。これをおもしろいと考える映画好きがいるのはわかるけれど、私にはどうしても悪趣味に思えた。とりあえず予想外のヒットと聞いた。
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