『箱の中の羊』の微妙さ
是枝裕和監督の『箱の中の羊』を劇場で見た。カンヌの評論家たちの「星取表」で最低に近いくらい評判が悪かった作品だが、ならばなおさら見たいと思った。そもそも映画祭の「星取表」はあまり当てにならないし。
見てみると、確かに「弱い」。是枝監督はさまざまな形で見る者をグイと映画内に引き込むのがうまい。『誰も知らない』は、何をするかわからない子供たちの行動から目が離せなくなったし、『歩いても歩いても』はどこにたどりつくかわからない家族の会話が抜群におもしろかった。
ところが『空気人形』や『奇跡』などは、見ていてどこに焦点を定めていいかわからなかった。今回の『箱の中の羊』もちょっとそんな感じがした。冒頭に出てくるように近未来社会が舞台で、建築家の音々が住むカッコいい住宅にドローンで荷物が届く。開けてみると7歳で亡くなった息子の翔のヒューマノイドが出てきた。
夫は工務店社長で木の材質にこだわった建築を手掛ける。妻は近くの空き地に建てる戸建ての設計をしている。妻はすぐにヒューマノイドになじむが、夫は最初は躊躇している。ところがだんだんなじんで愛情が沸いてくる。
ヒューマイドは食べないし、風呂にも入らない。けれど過去のデータをきちんと日常の会話には困らないし夫婦はだんだん楽しくなってくる。一方で息子のヒューマノイドは同じヒューマノイドの仲間たちと会って交流を深める。
話の展開はうまいし、撮影も実にいい感じなのだが、そもそも妻を演じる綾瀬はるかが、どうしても建築家に見えない。夫を演じる大悟の工務店はいいが、2人が夫婦には見えない。朝から納豆をすする大悟と綾瀬のたたずまいのどこにも愛が感じられない。そして妻が設計したであろう自宅が、あまりにも現実離れしている。
確かに本当に死んだ人間の代わりになるヒューマノイドができたら、本当にこんな社会になるかもしれない。そんなちょっと恐ろしい世界を巧みに描いているとは思う。しかしつややか過ぎる音楽が気になるのも含めて、私はどこか冷めた目で見ていた。次の作品に期待したい。
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コメント
息子のヒューマノイドは助手席に乗って登場します。
投稿: | 2026年6月11日 (木) 23時38分