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2026年8月14日 (金)

映画のポルトガル幻想

世界には、ポルトガルという国を好きになる映画監督がいるようだ。かつてフィンランドのアキ・カウリスマキ監督を日本に招待しようと連絡したら、事務所から毎年秋から冬はポルトガルで過ごしているという返事が来たことを思い出す。

去年『ヌーヴェル・ヴァーグ 世界の映画を変えた革命』を出した時、アラン・タネール監督『白い町で』(1983)を見直した。ポルトガルのリスボンにやってきた船乗りのポールが、ホテルのメイドと仲良くなり、いつまでも滞在する様子を8㎜で収めてスイスに住む自分の妻に送る話である。

ポールが歩くリスボンの街並みがすばらしい。どこか古くさく懐かしい感じに寂れていて、人々は寡黙だが人間味がある。ローザが働くカフェを兼ねたホテルは何もないが居心地はよさそうだ。そしてポールが撮った8㎜映像がさらに魅力を増す。そこに写る路面電車に1度は乗ってみたいと思う。

ポールは街のゴロツキに財布を奪われ、再会して取り戻そうとして刺される。メイドはいつの間にか去ってゆく。妻は8㎜か手紙を受け取るだけ。現代から見たら男性の自分勝手な行動と妄想に見えるが、それでもあんな街に一人で降り立ったらと思い描く。

ヴィム・ヴェンダース監督『リスボン物語』(1994)は、『白い町で』から人生や恋愛の悲哀を抜いたような幸福感溢れる作品だ。録音技師のフィリップは撮影監督のフリッツから「リスボンに来てくれ」と連絡を受ける。しかしフリッツはそこにはいなかった。フィリップはリスボンの音に興味を持ち、録音を始める。

そのうち近くで練習をしている音楽グループ「マドレデウス」と出会う。マドレデウスは海外公演に行くがフィリップは留まり、ひたすらリスボンを散歩し、音を集める。フリッツとようやく再開するが、何も起こらない。そういえば、マニエル・ド・オリヴェイラ監督が出ていたが。

同じヴェンダースが『白い町』と同じ頃に撮った『ことの次第』は、「美しいポルトガル」は全く出てこない。そもそも白黒だし、資金不足で映画の撮影が中止になったチームを描く。サミュエル・フラー監督が出ていた。もう1本、ロバート・クレイマーの『ドックス・キングダム』のポルトガルもひたすら汚く、暗い。

妻子をアメリカに置いたままリスボンで医者を続ける中年男にもとに、ある日息子(ヴィンセント・ギャロ)がニューヨークからやってくる。医者が通うバーのオーナー役でジョアン・セーザル・モンテイロ監督がいい味を出している。これはかなり好きな1本だ。

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